2022年度実績
地域材で学ぶSDGs教材の開発プロジェクト
ここ数年、木育、森林環境教育への関心が高まり、各地で様々なプロジェクトが実施され、製品開発やアクティビティの開発が進んでいます。さらに、SDGsへの関心の高まりは、環境や持続可能性などへの関心の高い市民を中心に、木材の利用への肯定的意識がしっかりと浸透しつつあると考えられます。
最近では、学校教育でも木材利用を「悪」と捉えるような教育は少なくなりつつありますが、学校における教材は、外国産材や合板、MDFなどがほとんどで、地域材で学ぶ機会がないという状況が見られます。
そこで本事業では地域やSDGsなどへの関心から教材としての普及の意義が高いと考え、首都エリアの地域材を使った学校むけ教材を開発し、その普及を図ることとしました。
1)教材キットの試作
A材での教材開発
子どもたちに良質な地域材に触れながらモノづくりの体験をしてもらいたい、それも生活の中で役に立つものを、という狙いで作成しました。地域材の時計やいすのキットなど、小学6年生の卒業記念製作用などに、高めの価格帯でのキットも作成。
これらを導入してもらうためには価格的に公的な助成が必要となってきます。森林環境譲与税などの使い道として、地域自治体に提案していきたいと考えています。
低コスト教材の開発
画一的な教材ではなく、材料の形状、数量等に自由度を持たせることで、たとえば工場等の廃材との利用、あるいは組み合わせが可能であることから、地域材の教材化の一例として検討し、具体化に取り組みました。結果的にコストダウンにもつながり、現在の市販教材との価格差も少ない教材パッケージ群を開発することができました。
2)普及用副教材の開発
学校で教材として活用されるためには、学びの効果を高める副教材が欠かせません。
国産材、地域材を利用することで価格の競争力が低下することを補い、付加価値の高い教材として構成するために、できる限り対象となる学校のエリアに関わる学習情報を収集し、SDGsの観点と関係付けながら構成していくことを検討しました。今年度は千葉県、埼玉県の資料について作成し、主教材としての地域材教材のパッケージ化を図りました。
共通部分では、国産材、地域材の利用が環境問題やSDGsとの関連を理解できるよう構成
地域部分については、地域の森林の状況、県内の木でつくられた施設や木や森に親しむことのできる場所の紹介、木材産業の状況について俯瞰し、関心を持てるように構成
3)学校における試行実践と効果分析
開発した教材を用いての試行実践
教材の試行実践を、千葉県のN小学校で行いました。小学4年生のSDGsについての座学の後に、モノづくりの授業として実施。図工と総合学習の時間を利用して2コマ+翌週に2コマ実施して、教材を完成させました。
SDGsと木育というテーマで「本来捨てられてしまうはずのものを使って、生活の役に立つものを作る」授業を展開。この施行により、必要とされる材の大きさや形状について、分析することができました。
ヒアリングと効果分析
試行実践の後、児童・生徒向けのアンケート調査、教員に対するアンケート、ヒアリング調査を実施し、教材パッケージの有効性及び課題を明らかにしました。
児童に対しては、地域材に対する親しみ、学習意欲、木や森に対する学習や、木材利用に対する積極性の高まりが明らかになりました。